日本テレビ系「金曜ロードSHOW!」で5月18日(金)に放送される映画『かぐや姫の物語』と「竹取物語」の違いについて調べてみました!
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映画「かぐや姫の物語」について
どうも、古文・漢文・チンプンカンプン、三神かな子です。現代文だけで点数稼ぎしていた高校時代……orz
そんな私でも古典に触れたいと思ったのがこちらの記事!
ジブリ作品の映画「かぐや姫の物語」が地上波放送されます!
日本テレビ系 2018年5月18日(金)21:00~23:49
4月に逝去したスタジオジブリ・高畑勲監督による映画として有名です。
昔話の「かぐや姫」は有名ですが、それをジブリ・高畑勲監督ならではの解釈でつくられた物語です。
世間一般的に知られている「竹取物語」と「かぐや姫の物語」の違いを調べてみました!
閲覧注意!映画「かぐや姫の物語」と「竹取物語」の違いは?
映画版「かぐや姫の物語」と「竹取物語」の違いを大まかにまとめました!以下、ネタバレ含みますので心して読み勧めてくださいね!
かぐや姫の幼少時代の描写
「竹取物語」ではほんの少ししかないかぐや姫の成人前の様子を、映画版では前半部分をかけて、里山の春夏秋冬までも丁寧に描いています。
逆に全体の多くを占める求婚部分の描写は、かなりあっさりめに編集されています。
幼少時代の話(幼名など)はほぼ映画版オリジナルといっても良いくらいです。「竹取物語」でぽっかりあいていた部分を事細やかにオリジナルを加えて埋めていった感じがします。
特に「原作と違う?」と感じられる部分は次の通りです
- かぐや姫が「たけのこ」から生まれる
- 捨丸という幼馴染的な存在
- 都へ移り住んだ時の家庭教師的存在
「罪と罰」について全編への盛り込み、暗喩的な表現
実は「かぐや姫の物語」の大筋は「竹取物語」とほぼ同じです。「竹取物語」で大雑把にしていたところにオリジナルで解釈を詰め込んでディティールをつくり、かぐや姫の細かい心情を盛り込んでいます。
そこにキャッチフレーズになっていた「姫の犯した罪と罰」が暗示的な手法で作品の全体にちりばめられています。
月で聞いたわらべ唄をエピソードや貴族の贈り物に展開させるなどして、「罪と罰」について、ぼんやり浮き上がらせる演出などを加えています。
特に「原作と違う?」と感じられる部分は次の通りです
- わらべ唄の存在
- 出てくる男性陣(求婚)が、総じてクズ(特に帝)
- かぐや姫のイメージ観(活発な部分)
- 月(天人界)への記憶の取り戻し方(原作ではあたかもはじめから知っていたふう)
- 月(天人界)との関連性
世界観を仏教思想に統一
「竹取物語」は世界観が特にない状態です。だからこそ「古典のSF」なんて言われてたりするんですが、「かぐや姫の物語」は仏教、平安時代の思想に合わせているように思えました。
月(天人界)にとって、わらべ歌が罪になる理由が、輪廻転生を賛美しているから=仏教思想では生は苦しみであるため、という解釈が導きだされやすくなります。
一番違いを感じられるのは「結末、終わり方」
一番の違いは「結末、終わり方」なのではないでしょうか?
月に帰ることになるのは同じですが、帰る時のかぐや姫の様子や「記憶」に関することは皆さんの頭にある「竹取物語」と大きく違うように感じられると思います。
特に「原作と違う?」と感じられる部分は次の通りです
- かぐや姫は月の使者から衣をかけられて一瞬にして地球での記憶を消されてしまう
- 記憶が消された(月での記憶と性格を取り戻してから)後に、おじいさん、おばあさんの前から立ち去り月へ向かう
キャッチコピー「姫の犯した罪と罰」は?
キャッチコピーにもなっている「姫の犯した罪と罰」。
この答えなんですが、映画では暗喩的なことばかりで、ハッキリとした「罪」と「罰」についての指摘がありません。
かろうじて、最後のほうに月の使者が「かぐや姫はつきの世界で罪をおつくりになったから地球に来てたんだよ」っていう表現がある程度。
ちょっと不親切というか、キャッチコピーで大々的に銘打っておいて、しっかりした答えが用意されてないのでそれはないんじゃないの?っていう肩透かし、モヤモヤ感が残るわけですが……。
実は、小説版の方に、その答えが比較的ハッキリと分かる内容が書かれていました!
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小説版には、高畑勲監督の判断によって映画版でカットしたシーンがいくつか描かれています。
そのカットされたシーンに「罪」と「罰」についての答えが書かれていました。
かぐや姫が月にいた時に、ある女性が歌っていた、とある歌ーー。
実はその歌は、女性が過去地球で暮らしていたころの歌「わらべ唄」。
地球での記憶は残っていないのになぜか度々歌っていた。
かぐやはその歌を聴き、地球へ憧れを抱きます。
月は病気、死、喜怒哀楽さえない、安定した世界ーー。
地球はからみたら真逆の、不安定な世界ーー。
月の世界(天人界)は穢れのなき世界、地球は穢れのある下賎な世界とされています。
かぐや姫が月に居たころに、命あふれる地球に想いを馳せたことが罪となり、罰として人として生きる事を強要されます。
かぐや姫は月の偉い人に
- 月の世界では、地球に憧れることは罪なので罰を与えなければならない
- 地球で生きていて、月に帰りたいと願った時に罪を許す
- なぜなら、月に帰りたいと願う=地球は穢れのある下賎な世界と認めたことになるから
と言い渡される場面が小説版にはあります。
つまり、
かぐや姫の「罪」は「地球への憧れ」(月の世界の否定)
かぐや姫の「罰」は「地球での生活そのもの」(月の世界の肯定、地球の世界を否定させること)
といえます。
ネットでの声「姫の『罪と罰』は何なのか?」という答えはさまざまありました。
- 自分の心に従うことが「罪」。「罰」は自分の心を殺すこと。記憶を失って去ることは周囲の人にとって彼女の死に等しい。
- 命あふれる地球に想いを馳せたことが「罪」となり、「罰」として人として生きる事を強要された。かぐや姫は地球を見てみたいと思った、知りたいと思った。地球で人として生きる事はかぐや姫にとっては罰ではなく願ったり叶ったりの出来事。
- 自分から何かしなくても、産まれながらの美貌やお金を持っていることで、それに振り回される他人がいて不幸せにしてしまうのが、「罪と罰」
- 「罪」とは感情に憧れた事であり「罰」とは感情を知ったこと
奥が深すぎます……(ーー;
補足:原作「竹取物語」は複数ある?
映画「かぐや姫の物語」と古典の「竹取物語」との違いを比べようと調べてきましたが……実は「竹取物語」は複数存在することが分かりました(汗。
「竹取物語」には原作といえるしっかりした根本となる作品がなく、昔の人々からの語り継ぎや伝承によって、いくつも存在します。昔の人たち同士でもですが、昔の人から次の時代の人へと語り継がれる時に若干の変容をしつつ現代に至っているようです(汗。
時代間を網羅してしまった伝言ゲームで伝わってきたのが、現代の「竹取物語」って感じです(^^;
なので、映画版「かぐや姫の物語」とのきっちりとした違いを述べるのが難しい部分もあったりします。各自それぞれがどんな「竹取物語」に接してきたか次第ってのもあるので。
……というわけで、若干余談になりますが「竹取物語」の大きな系統を紹介します。
「竹取翁原話」
奈良時代末期に作られたという『万葉集』。万葉集に伝わる竹取の翁の伝説、「竹取翁原話」があったといわれています。「竹取物語」の前に元ネタみたいなのがあった、という感じですね。
内容は羽衣伝説などの天人女房説話に近いものだったようです。
古典「竹取物語」
平安時代に作られた古典「竹取物語」=原作となる「竹取物語」?
平安時代初期に「竹取物語」の基本となる竹取の翁とかぐや姫の話に、貴族や帝の求婚、かぐや姫の無理難題の説話が加わりはじめました。
『源氏物語』や『今昔物語集』などでの筋書きはおおよそこんな感じになります。
1.竹取の翁が竹から生まれたかぐや姫を見つけ、育てる
2.翁が竹の中に金を見つけて豊かになる
3.かぐや姫が成人、その後貴族からの求婚に難題を出して断る(貴族の数は3人か5人、贈り物も違う場合あり)
4.かぐや姫が帝の求婚を断る
5.かぐや姫が月からの迎えに従い天に昇る
一応、私達がよく知る「竹取物語」「かぐや姫」の土台ができてます。
この時代から「竹取物語」には複数のバリエーションが存在したと考えられています。
貴族に関すること、帝の後日談、和歌のやり取り等の細部もどこでどうアレンジされたのか曖昧です。
異説「竹取物語」
先程の古典「竹取物語」から大幅な改変が加えられた作品もあります。
かぐや姫はウグイスの卵から生まれる!?
かぐや姫が帝の后となり、別れ際に鏡を贈る!?
……といったエピソードや貴族文化への憧れや帝とのロマンスなどが強調された内容が盛り込まれた「竹取物語」もあったそうです!
アレンジがききすぎたともいえる「竹取物語」は平安時代以降に出てきたようです。
現代の「竹取物語」
現在、一般的な形で広まっている「竹取物語」や「かぐや姫」は、古典「竹取物語」を土台にして異説「竹取物語」の良いところをバランスよく総編集したものともいえます。
さらにここから絵本になったり児童書になったりする部分で、出版社側の編集や意図もかかわってくるので、接してきた本次第でこまやかなニュアンス違いが出てきます。
まとめ:ジブリが語り継ぐ「竹取物語」
映画版「かぐや姫の物語」と「竹取物語」の違いですが
- 大筋は一緒
- 「竹取物語」で主に深入りしていなかった幼少期などをオリジナル要素を盛り込んで膨らませた
- 最後の部分から結末に向けてのかぐや姫の「記憶」について
- キャッチコピーの「罪と罰」は映画オリジナル要素
それでは!
追記
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