映画「プラダを着た悪魔」でなぜアンディは鬼編集長ミランダの元を去ったのか?
ずっとミランダへの不満を募らせていたアンディでしたが、徐々に認められ理解している描写もありながら、結局はミランダは立ち去り、本当に自分が進みたかった道に。
一体なぜなのか?を詳しく解説していきます。
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【プラダを着た悪魔】ラストでアンディがミランダの元を立ち去った理由
ミランダの理解はできても納得・共感できなかった
アンディはミランダの仕事・私生活に対する姿勢を理解してきましがた、どうしても納得できない部分がありました。
特に納得できなかったのは「裏切り・人間を踏み台にしてでも叶えたい仕事・事業がある」という点ではないでしょうか?
ミランダが、ナイジェルを結果的に裏切って自分の身を守りました。
そしてアンディがエミリーを裏切ってパリに来たことに関して、ミランダは「同じことだ」「自分と似ている」とアンディに対して言い放ちます。
「この世界で生きていくためには必要なことだ」
ファッション誌業界で生き抜くためには周りの人間を踏み台にしていくことは当然、と言い切ったのです。
この点に関して、アンディは納得も共感も全くできませんでした。
ファッション界に全てをささげる気持ちがなかった
人を蹴落としてでもファッション界で生きていたいミランダと、結果として人を蹴落とした形になってファッション界にいるアンディ。
ミランダが「同じこと」「似ている」とはいえ、結果は同じだとしても過程は全く違います。
アンディにとってエミリーを裏切ったのは、ミランダからの命令で「仕方のなかったこと」だったからです。
さらに、アンディは物語の序盤から見て取れるように、ファッションの世界には全く興味がなかったところ、仕事をするなら同じ土台に立たねばと奮起してきた状態。
アンディはミランダとは違い、周りの人を犠牲にしてまでファッション業界にすべてをかける気合いで、今この場に立っていませんでした。
そのことにアンディは気付きます。
But what if this isn’t what I want? what if I don’t want to live the way you live?
(でももしこの世界が私の望まないものだとしたら?もし私はあなたのようには生きたくないとしたら?)
アンディの問いに対し、ミランダも答えます。
「バカを言わないで、みんな私たちみたいになりたいと思ってるわ」
女性全員が、ミランダはじめファッション業界のトップの人たちみたいになりたいと思っている、と断言したのです。
アンディはジャーナリストの世界に飛び込みたいと思っていて、ファッションなんて興味のなかった人間です。誰もがファッション界に憧れてなりたいわけではないことは、アンディ自身が証明しています。
ミランダの仕事に対する情熱は認めても、こうした部分は納得できず、アンディはミランダの元を去る決断に至ったといえます。
【プラダを着た悪魔】ラスト直前~結末までの流れ解説
悪魔のミランダと人間らしいアンディ
アンディはじめ周囲の人々は、仕事での「悪魔のミランダ」ばかりを見てきましたが、仕事としてミランダに食いついていくアンディは「人間らしいミランダ」を垣間見ます。
ミランダが離婚や子どものことに悩んでいる姿を見て、アンディは自然と必死で助けようとします。「人間らしいミランダ」の部分に共感したところがあったからこそです。
しかしながら、先述のとおり、ミランダの発言のいくつかに納得できず、またミランダはじめファッション界に情熱を燃やしている人たちとは違う自分に気づいて、ミランダの元を立ち去ります。
アンディが立ち去った後のミランダ
アンディが立ち去った後、ミランダは粋なはからいを見せています。
アンディが新しい出版社に面接に行った時に、ミランダから編集長に推薦のFAXが届いていたことが分かります。
I called over there for a reference, left word with some snooty girl, next thing you know I got a fax from Miranda Priestly saying that of all the assistants she ever hired, you were by far her biggest disappointment. And if I don’t hire you I’m an idiot. You must have done something right.
『彼女は今までで最も期待を裏切ったアシスタントだった。彼女を採用しないのなら大馬鹿者だ。』
【プラダを着た悪魔】結末シーン・場面の解説
「彼女を雇わなければ大馬鹿だ」
アンディが応募した就職先の会社で判明した、ミランダからの推薦ファックス。
最後のたった一文「彼女を雇わなければ大馬鹿だ」にアンディ自身も驚きます。
最後まで直接表に出してこなかった、ミランダがアンディの仕事っぷりを認めていた気持ちが詰められています。
もしかすると、ようやくここでアンディはミランダが「私に似ている」といったことは「仕事に対して真面目で情熱を注げる人間である」という意味も含まれていたのでは…と気づいたかもしれません。
アンディがミランダを見かけて手を挙げて挨拶するシーン
アンディはミランダの元を去った後。
就職先の面接・面談からの帰り道、道路の向こう側にミランダの姿を見かけます。
車に乗り込もうとしているミランダに対して、アンディは手を挙げて挨拶をします。
しかしミランダはアンディだと認識するものの、何も言わずに車に乗り込みました。
車内でミランダがほほ笑んだ場面
ミランダはアンディを無視する形になりましたが、車に乗り込んだ後、ミランダはほほ笑みます。
一体どういうことなのか?
- 純粋にアンディが挨拶してくれたのがうれしかった
- 自分らしくないことをしたという照れ笑い
- 自分とは全く違う価値観の人間・女性の仕事の成功を応援できる気持ちになった
時に衝突し合い、結局は自分の元を立ち去ったアンディが、辞めてもなお自分に挨拶をしてくれている姿が純粋にうれしかったのではないでしょうか?
鬼編集長ミランダに蹴落とされたり、悪魔のミランダについていけずに辞めていった部下はたくさんいることが簡単に想像できます。ミランダから離れた人たちは、街中で彼女を見かけたとしても無視したり睨んだり隠れたりしていたのではないでしょうか。
でもアンディは違います。ミランダに対して手を挙げて挨拶しようとしたのです。
逆に面を食らって無表情だったけれども、車に乗った後に思わずほほ笑んでしまったのかもしれません。
そして、編集長あてのファックスです。
いつもの彼女のように嫌味・皮肉たっぷりの出だしからはじってはいたものの仕事っぷりを認める賞賛の内容でした。
この「らしくない」自分自身らしくない、柄にもないことをアンディにしちゃった感で笑った可能性もあります。
さらに立ち去ったアンディがこれまで接してきた人たち
- ファッション業界こそが全ての人間
- 地位や名誉、お金が全てといった人
- ミーハーや憧れだけでファッション界に飛び込んできた若者
とは全く異なる女性・全く価値観が違う人間を認められたことで、思わず笑顔になって「あなたの生きたい世界で頑張って」と応援したい気持ちを持てるようになったのではとも考えられます。
ひとえに世界は違えど「仕事に対して熱心」という共通点があったからこそ、ミランダはアンディを見た後に、アンディへの思い出や想いを馳せてほほ笑むことができたのではと思います。
アンディの服装に似合わないピンヒール
ミランダ同様、アンディの心の中にも変化が起きていました。
その象徴が「ハイヒール」(ピンヒール)です。
- ファッションに少し興味を持てた
- 働く女性の新たな決意と「武器」
アンディもまたファッション界に「なんでこんなどうでもいいことに熱心に語ってんの?」などといった偏見を持っていました。
しかしそんな彼女がファッションに目覚めるきっかけになったのが、ジミーチュウのハイヒールでした。
さらにミランダの「他人を犠牲にしてまでもファッション界に身を投じて全てを捧げたい」という仕事への情熱を通じて、自分が分からない世界でしのぎを削る人たちがいることを理解してきました。
これも「仕事に熱心」という共通項があったからこそ。
特にハイヒール・ピンヒールというところが「女性が仕事すること」の象徴になっていますよね。
「武器」というのは大げさかもしれませんが、あえてピンヒールを履く=自分の選んだスタイルで・新しい世界を歩み始めるアイテム、といっても過言ではないでしょう。
さながらファッションの世界に目覚めて新しい一歩を踏みしめた時のように、です。