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第五章 小さな事件
渡辺が草津の手打ちそば屋の女主人に暴力をふるい逮捕された。
草津に泊まっていた十津川と亀井はすぐさま渡辺の元へ行き事情を訊ねるが渡辺は一切口を開かない。
被害者の女主人は、相手の手が滑って、それが顔に当たって転んでしまっただけなので訴える気はないとだけしか言わないという。
病院を退院した後にそば屋に行ったのがわかっているものの、その間の時間が空きすぎている。十津川は渡辺が逮捕される前どこかに立ち寄ったと推理し、ガラス館へ足を運ぶ。
そこでも不思議な事件が起きていた。若い男性がガラス館の商品を割って暴れたという話があったのに、当の主人は店の改装をするためと突然店を閉めていたーー十津川は大量に割れたガラスを発見して店主に突きつけるものの、なぜか若い男性が暴れたのではないと主張する。
釈放することになった渡辺に十津川が同伴して、渡辺を説得しようとする。
十津川は推理をしながら渡辺に聞くーー以前聞き込みをした時には美奈を見た、と言っていたのに、見ていないと証言を覆した。それに腹が立って暴れたのではないか?しかも店主たちは渡辺を訴えるどころか事件を隠そうとしている、それはなぜか?ーー渡辺は認め、草津の人たちが一斉に見ていないと証言し始めたことに立腹して暴力をふるってしまったという。
渡辺は少しずつだが、正直に事の成り行きを話し出す。
渡辺と美奈の出会いは会社の上司に連れられていったクラブで、美奈に本気で惚れてしまった。どうにかしてデートにこぎつけた時に彼女の夢の話をしてくれた。アメリカ暮らしをするためにお金が必要で、ママの別荘の軽井沢に呼ばれて、うまくいけば何百万円と手に入るチャンスがあるーーしかし渡辺には軽井沢の別荘で何があるのかを教えてくれないまま。
その後何ヶ月かしてクラブに行ってみると、彼女がいなくなっていた。しかし夢の話を聞いていたので信じられない。十津川の名前を使って聞いてみてもクラブの人たちは口が堅くて教えてくれない。
そのうちに一人のホステスが教えてくれたことーー美奈が軽井沢の別荘から突然逃げ出して草津温泉に行ったらしい。誰かに追いかけられているから身を潜めていたと思うがその後本当にいなくなってしまったーー渡辺は美奈が何かがあって事件に巻き込まれたと思い、調べているうちにさつきを知った。彼女に近づくのに助けるふりをして、十津川の名前を使ったという。
さつきと別れたのは貯金が続かなくなってしまったから。しかしさつきも殺されてしまった。ますます美奈のことが心配になり、友人に借金をしてここにやってきた。美奈は確かに草津温泉にいた。そして何か喋ったのではないか、誰かに助けを求めたんじゃないかを知りたくて調べている最中に何者かに襲われたが、助かった。
十津川も渡辺も、相手は警告のつもりで、これ以上、井上美奈、井岡さつきのことを調べるなという脅しなのだろうと推理した。
さらに推理をするとーー
クラブのママ・北川は常連客を軽井沢の別荘で秘密パーティーを開いて、常連客の弱みを握って大金を巻き上げている。そのために若いホステスが利用された。特に井上美奈は若くて美人で人気があった。
その秘密パーティーで何かがあった。それを美奈が見てしまった。口を封じられるのを恐れて草津温泉に逃げ込み、北川や常連客を脅迫していたのではないかーー。
第六章 実力行使
十津川と亀井は草津温泉に泊まりながら渡辺の様子を見ることにしたが、失敗だった。
気がつけば渡辺は宿泊先から姿を消してしまっていた。十津川は渡辺に騙されたと思った。
宿泊先の女将はじめ、草津温泉の人々は渡辺に美奈のことを話せなかった罪滅ぼしに、渡辺の願いーー二日間は十津川たちに居なくなったことを伝えないでくれーーを受け入れていた。
十津川は草津温泉の人々に圧力をかけた黒幕が誰なのかを女将に聞くが、教えてくれない。ただ想像はつくでしょう?だから暴力沙汰が起きた店主の二人は辛くて申し訳ないと思い、渡辺が姿を消すのを手伝ったのだという。
十津川もうなずくしかなく、東京への捜査へふたたび戻る。
東京では新たな事件が起こっていた。東山勲という50歳のタレントが誘拐されたという。
東山は北川のクラブの常連客で、渡辺が実力行使に出て常連客からパーティーで何が遭ったのかを白状させにかかっていると十津川は判断する。
急いでクラブに行き、北川を問い詰めるものの、一切口を割らない。
さらに二日後、今度は歌手の小暮裕子が誘拐された。小暮は若手政治家・若杉実との仲が噂になっていて、若杉が例のクラブの常連だという。
小暮裕子が誘拐された翌日、捜査本部の十津川に渡辺から電話が入る。
美奈がどうなったのか真相を知るためにはこうするしかなかったという。殺すつもりはなく真実を話してくれれば解放するし、わかったら十津川にも知らせるといい、電話を切ってしまう。
その後、渡辺と誘拐された二人の消息もわからないままに時間が経過した。
三日後に突然、草津温泉の女将から電話が入った。十津川と話をしたいという人が二人来ているという。
十津川と亀井は急いで草津温泉に行ってみると、誘拐された二人と会うことができた。
話を聞くと、誘拐されたものの脅迫はされず、殺された女性、失踪した女性がいる、本当のことを話してくれと毎日頭を下げられたという。そこでどうしてもしゃべらないわけにはいかず話したという。
秘密のパーティーで何が起こったのかーー。
一昨年の秋の軽井沢でのパーティーでのこと。
軽井沢には政治家・若杉の別荘もあり、若杉は自分の趣味の高価なライフル3丁を自慢したくてパーティーに持ち込んだ。他の常連客にも評判がよく、盛り上がっていると北川が銃を使って遊ぼうと提案してきた。
ホステスたちにお面をつけて動物にして、客が銃で狙って撃つ。もちろん実弾は込めずに空砲で。空砲で命中したと思ったホステスはうまく倒れる。その倒れ方がうまかった人にはご褒美が出る。
ーーそんな遊びをしている最中、空砲のはずが引き金を引いたら実弾が飛び出し、ホステス一人に命中、即死してしまったという。
酔いが回っていたり、家中に植木を置いたりして工夫を凝らしすぎていたために、誰が打ったのかいつ死んだのか、誰がなぜ実弾をこめたのかもわからなかった。
政治家や社長、有名タレントや金持ちばかりが参加しているパーティー。全員一致で事件を隠すことにした。参加していた医師が自分の病院で病死したことにして、北川が葬式を出して、遺骨を両親に持たせて帰したという。
しかし井上美奈は黙ってはいなかった。美奈は北川を強請っていたという。
井岡さつきも一昨年秋のパーティーが原因で殺されたとは思うが具体的には知らないし、美奈の行方も知らないが多分殺されているのではないだろうかーーというのが誘拐された二人の見解だった。
誘拐された二人とも、渡辺からの助言で、草津温泉の女将を頼って十津川警部に素直に話せば、ホステスたちのように殺されることはないだろうと助言されて、今に至るという。
十津川は二人から事件当時パーティーに参加していた人たちの名前を聞き出し、しばらく草津温泉にとどまっているようにいった。
東京に戻った十津川は、捜査会議は開かずに、捜査本部長の三上に報告をして自身の推理を展開した。
渡辺は、誰がどんな目的で実弾を込めて打ったのかがはっきりしない限りは、殺人を犯したりはしないーー
渡辺は第一に美奈がどうなったのかが知りたいのだから、誘拐した二人から話を聞いて、クラブのママ・北川へ接触するのではないかーー
十津川は亀井と二人、六本木のクラブに急いだ。店は臨時休業で、店の中には北川とマネージャー杉浦の姿があった。
十津川は北川に事情聴取をすると、渡辺から電話で脅しがあったものの、渡辺は自分の居場所は言わなかった、北川は渡辺の質問に対し、美奈の行方もどうなったのかも何も知らないと答えたという。
第七章 最後の賭け
十津川は以前として渡辺の所在はつかめなかった。
渡辺は二人の女性を愛した、一人は井上美奈、もう一人は井岡さつき。美奈は生死がわからないが、渡辺は死んでいると思っているに違いない。二人の女性のために復讐をする気だーー。
十津川はそう推理していた。さらに推理は続く。
クラブのママ・北川は全てを知っていたのでは?別荘に隠しカメラや盗聴器を設置していてもおかしくはないので北川だけは知っている情報があるのでは?そして渡辺も同じように考えるだろう。そうなると復讐の相手はライフルを持ち込んだ政治家・若杉と、別荘の持ち主かつパーティーの主催者の北川で間違いないーー。
さらに参加者リストの中で、国土交通省の政務次官・八木沼勇という人物も気になるーー。草津温泉自体の発展に相談に乗れそうな人物であり、草津温泉の人々に圧力をかけた張本人ではないかーー。
政治家2人が今どこにいるのかを当たってみると、芳しいものではなく、2人とも外出中のままだった。
十津川はクラブに行き、今度は参加者リストを見せながら北川を問い詰めた。なかなか口を割らない北川に十津川は暴力団S組の幹部をクラブの用心棒として雇っていたこと、さらにS組を政治家・若杉に紹介したのでは?直接手を下していないものの、殺人事件の片棒を担いでいる状態の北川にゆすりをかける。
全て若杉がやった可能性が高くて自分は人殺しに関与していないと食ってかかる北川に、十津川はある作戦を提案して北川に協力してもらうことにする。
それはタクシーに乗り自宅のマンションに帰って、わざと誘拐されてもらう。警察がそれを好機に渡辺の居場所を突き詰め、逮捕、行方がわからない若杉と八木沼、北川の安全を確保するというものだった。
北川はその提案に乗り、計画を実行した。
馴染みのタクシーに乗って帰路につく北川。そのタクシーを尾行している警察。しかし何も状況に変化がない。
十津川は北川にタクシーの運転手や様子について訊ねると、顔見知りの運転手ではなく、様子に変わったところはないものの、深夜の運転のわりにゆっくり走行しているという。
慌ててタクシー会社に電話をすると、タクシー会社では北川がひいきにしている運転手を今日も派遣したのだという。
渋滞の最中、停止しているタクシーを渡辺が乗っ取ったのではないか?そして運転手に化けて、店に迎えにいったのではないか?
尾行中の刑事に十津川が連絡したところ、タクシーが急にスピードを上げ始めたという情報が。
タクシーはマンションの地下駐車場に入っていき、タクシーを調べてみるとトランク内に運転手が倒れている以外はもぬけの殻だという。
マンションの最上階は政治家・若杉が秘密に借りていた部屋があり、どうやらそこへ潜伏、3人を監禁していると思われた。
十津川と亀井は急いで現場となるマンションへ向かった。待機している刑事たちにきくと、強引に踏み込んだら「人質を殺して自分も死ぬ」という返事があったという。
十津川は北川の携帯に電話をかけた。渡辺が出たので、電話越しで説得に当たった。
説得と同時進行で、亀井は上司の本多一課長に電話をし、突入の段取りを進める。
亀井は手帳に
「一時間後、ヘリコプターで、上空よりこの十八階の部屋に突入する予定」
と書いて、電話している十津川の目の前に見せた。
十津川は渡辺に、殺したあとのことも考えたほうがいいから三人の自白を取るように促す。ボイスレコーダーがあったという渡辺に、ボイスレコーダーに三人の告白を録音するように提案し、丸一時間は突入しないことを約束し、電話を切った。
時間は経過し、上空にヘリが到着したことを亀井が伝えると、十津川は再度、渡辺に電話した。屋上からの突入に気づかれないよう、くどくどと説明する十津川に渡辺が受け答えしていた途端、爆発音がした。
それは、ヘリで到着した警官が催涙ガスを打ち込みながら部屋に突入したことを示していた。
部屋の外、廊下に居る十津川たちにはわからないーー15分ほどしてドアが内側から開けられた。ガスマスクを付けた機動隊員から、三人と渡辺の無事を確認。
十津川たちも部屋に入り、渡辺に近づいていくと、渡辺は涙を流していた。騙し討ちされた渡辺は、十津川にボイスレコーダーを握らせ、敵討ちを十津川に頼んだ。そうしてくれないと、またあの三人を誘拐して今度こそ殺すと言い、十津川を睨んだ。
原作の犯人は誰?
犯人は政治家・若杉と思われるが、原作では動機・具体的な犯行方法は述べられていない。クラブのママ北川主催の秘密パーティーで、とあるホステスを射殺したようだ。
井上美奈にその件について揺すられ、暴力団組合に依頼して殺した模様。井岡さつきも同様と思われる。
ニセ十津川&誘拐犯は渡辺敬一郎。井上美奈の失踪の真相と井岡さつきの仇討ちもあって誘拐を実行。美奈とさつきが死んだ原因となった北川、若杉、圧力をかけて捜査を邪魔した八木沼の殺人までも企てる。
原作とドラマの違いは?
原作とドラマの大きな違いは次の通りです。
- 舞台設定が違う(ドラマは京都嵯峨野、原作は草津)
- 十津川班のメンバー
- 女性の死体(ドラマでは井岡さつき含め3人、原作はさつきのみ)
- 真犯人が違う
- ドラマ版では秘密パーティーの詳細と参加者の人間関係が分かる
- それに伴い、オリジナルキャラクターがいる
※細かい違いや比較はこちらの記事で確認できます!
十津川警部シリーズ5は京都嵯峨野殺人迷路!原作との違いは舞台や犯人?
まとめ:なぜ舞台を草津から京都に移したのか?
【動画】群馬県草津白根山の噴火直後の映像 ⇒ https://t.co/Xw3lh68Wgj pic.twitter.com/ya26EqaE7V
— じゅんいち@嵐好き (@jyun1_0402) 2018年3月30日
舞台変更された憶測ですが、もしかすると撮影スケジュールを組んだ日程が、草津の白根山が噴火した時期と全くかぶってしまったのかもしれません。
ロケ地を予定していた場所に立ち入り規制がかかったり等の問題があったのではと推測されます。
そして、内藤剛志さんはじめ俳優陣たちのスケジュール変更をするのも難しかったので、急遽、ロケ場所だけ変えて撮影に踏み切ったのでは?と考えられます。それだと脚本等の手直しも必要最小限に抑えられるので、「ロケ地のみ変更」が一番労力が抑えられたのではと思います。
そして原作の肝となる設定舞台に
- 芸者からの話
- 草津=隠れ家的な観光地?
- 別荘
という部分があるのと緊急的にロケ場所としてセッティングするのに京都はまさにうってつけだったのかなあと思います。
[毎日]<大分>別府温泉、草津温泉を応援広告 本白根山の噴火で https://t.co/ssHiAEb5nM 「今は、別府行くより、草津行こうぜ」。大分県別府市が、群馬県草津白根山の本白根山の噴火で一時客足が減った地元の草津温泉をユニークな広告で応援している。草津と別府は、旅行業界による数種の人気温泉… pic.twitter.com/RuzqHzFc1d
— ニュース速報(一般紙系) (@FastNewsJP_) 2018年4月6日
今後はぜひ、何かの折でリメイクされてドラマになるなら草津温泉が舞台での回を見てみたいですね!
それでは!
こちらのミステリーのネタバレはいかが?
浅見光彦平家伝説殺人事件の原作ネタバレ結末は?真犯人は窪塚俊介?