浅見光彦平家伝説殺人事件の原作ネタバレ結末は?真犯人は窪塚俊介?

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悲劇

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浅見は愛車とともに「しーふらわー」に乗る。

同行したいと申し出る佐和を嗜めての単独行動だった。

晴海埠頭までやってきた佐和を見た堀ノ内は浅見に「あの子はお前には出来過ぎだ、ちゃんと摑まえておけよ」と言う始末。

 

翌朝、那智勝浦から車を走らせて名古屋に向かう中、浅見は思案する。

二人三脚を続けてきた稲田教由と当山林太郎が殺しにまで発展するほどの確執があったとしたらなぜなのか?

報酬も2人にとって甘いものではなく、当山は死に、教由が潜伏生活を続けなければならない以上は実質的に自由な金を使えるのは萌子だけ。そんな割に合わないシナリオを男2人が書くものだろうか?

予想もしなかった変事があって計画に齟齬が生じた結果なのか?

2人の男と萌子は複雑な関係だったのか?

浅見は教由の葉書にあった「桑名」の名が頭をかすめながら名古屋へ向かっていく。途中、小さな緑地公園で奇妙な格好をした白色セメントの塑像、「伊勢湾台風殉難之塔」を見つける。

名古屋の中心のビジネスホテルに宿を取り、朝目覚めてすぐに東京に電話を入れた。

佐和に電話に出てもらうと、昨夜萌子から電話があり、叔父が会いたいということで、午後1時に萌子のマンションに行くという。

やっぱり生きていたーー浅見は複雑な思いだった。

誰にも言うなと言われていて、警察には知らせないほうが良いと浅見は判断。でも不吉な予感がして、無理は決してしないよう佐和にアドバイスして電話を切った。

 

佐和に会う教由の目的は?

気がかりだったが、愛知県警へ向かった。

広報課に通され、「課長補佐秋山警部」などの机の札を確認していると、田中が応対してくれた。

浅見は昭和34年9月から10月にかけて、凶悪犯罪の記録がないかを調べてようとしていたが、記録等の保管も短いため残っていない。

田中は署内にいた詰め記者・小川に相談し、浅見に新聞の縮刷版で調べてみることを提案、勧めた。

小川が新聞社を紹介すると申し出てくれ、あれこれ話しとしていると「昭和34年は伊勢湾台風のあった年」と口にした。

ドキッとする浅見。

5000人以上の死者・行方不明者を出した伊勢湾台風を調べることにした。

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小山が勤める新聞社で、小山が口利きしてくれた本山記者(モツ山)のおかげで資料の閲覧がスムーズにできた。

伊勢湾台風の被害状況を調べるにつれ、被害があった日と葉書の日付が一致したこと等から、流浪の2少年ーー教由少年と林太郎少年も大災害の真っ只中にいたと確信。

少年たちが歩いたかもしれない経路をたどりながら、地元民へ聞き込みをしていくうちに、浅見は「木曽川の洪水もあって行方知れずになった人も大分いた」等の話を聞き、脳髄を刺激されたように重大なことに考えが及ぶ。

浅見はふるえあがりながらも浅見家に電話をかける。

佐和は既に浅見家にいなかった。

麻布署の西本捜査係長に電話をかけると外出中だが、至急、南青山の萌子のマンションに行ってほしいと頼み込む。

電話口の警官は、先刻110番があって、多岐川萌子の自宅で傷害事件、被害者女性は死亡状態。現場にいた女性を1人確保したという。

 

なぜ佐和を引き止めなかったのかーー佐和を失った悲しみと自分の愚かさに憤りながらハンドルを握り、東京に戻る浅見。

 

麻布署に駆けつけると、電話口で応対してくれた米村巡査部長と対面。

被害者に会うとーーー

 

 

多岐川萌子だった。

 

 

犯人らしき女性が、佐和だった。

佐和は取調べ中とのこと、根岸刑事課長と会う。

根岸によると佐和の口は固く、浅見家に連絡をしたばかりで、浅見の速い登場に面食らっていた。

まずいと思い浅見は浅見家に電話する。母へ兄に麻布署へ来ないように釘をさす。

 

刑事たちから事件の詳細を聞く。

ドルチェ南青山の住人から110番があり、「若い女の人が、マンションに住む女性を刺殺したらしい」という内容で、現場近くにいたパトロールカーの警官が向かってみると、被害者の部屋のドアのところに女性がぼんやり立っていたので直ちに確保したという。

目撃者の話では、通報の直前、悲鳴が聴こえてすぐドアが開き、若い女性が飛び出してきていきなり「死んでる」といったという。

凶器は短刀で、佐和が持っていたというのだ。検出された指紋の佐和のもののみ。

 

特別に浅見は取調室に入り、佐和と会話することができた。

浅見は佐和に最初から順を追って話すように言うと、佐和は答え始めた。

1時丁度にマンションを訪れたものの、応答がない。ドアがキチンと閉まっていないことに気づき、何の気なしにドアノブを引き、玄関に入ったという。玄関で足元に棒のような物が落ちていたので拾った。部屋には電気がついていて、お湯が沸くような音が。

二度ほど声をかけてから部屋にはいると、リビングルームの奥のドアが少し開いているスキマから床に女の人が倒れているらしい姿が見え、病気と思い部屋に入ってみると、体の下から血が流れているのが見えた。誰かに知らせようと思って玄関を出た時、男の人が通りかかったので死んでいると言ったーー。

 

浅見は警察に自分の推理を話す。

稲田教由は、実は昭和34年の伊勢湾台風の時に、既に亡くなっている。

当山、萌子、稲田教由になりすました人物は、すでにこの世に存在しない人物をもう一度殺して保険金をせしめた。

稲田の替え玉が当山を殺したとすれば、何もかも辻褄が合う。

 

しかし「稲田の替え玉」が何者なのかが分からない限りは、浅見の推理の信憑性はなく、現時点では佐和が萌子を訪ねて揉め事があった末に死に至らしめたと考えるのが妥当、現に数日にもわたって「揉め事」があった等もあり、例えあらかじめ殺意がなかったとしても佐和の犯行という本線は崩せないーー根岸刑事課長に言われ、浅見は沈黙、橋本刑事課長と顔を見合わせた。

第三の男

麻布署を出た浅見。既に深夜だったーー

佐和を”救出”できずに疲れ果てながら、平塚神社に足を運び、考えを巡らせた。

第三の男の存在を立証するしかない。

その手がかりをどうするか?

社殿に向かって手を合わせ、神社の祭神が源頼朝であることを思い出し、平家の末裔である佐和の無事を祈ったのは筋違いかなと思うと自然と笑みが浮かんだ。

社殿左手には裏山への小道がある。暗闇の中、裏山への小道をなんとなく登っていると、

「だめよ」「いいじゃないか」

男女の声が聴こえてきた。

「ねえ、いいだろう、マサエさん」

「だめよ、しつこいわね、ヨッちゃん」

 

しつこいわね、ヨっちゃんーー

 

そのフレーズに、浅見は覚えがあったーー

 

多岐川萌子に何度も電話してようやく出た時に最初に投げつけられた言葉が、まったく同じだった。

「ヨっちゃん」とは何者なのか?

「ヨっちゃん」こそ、第三の男ではないのか?

浅見の胸のうちで疑いが急速に広がっていったーー

次の日の夜、銀座六丁目にある萌子の店「女優」を訊ねた。

「ヨっちゃん」について聞き込みをするものの、店員も客にも心当たりはない上に、マナーに厳しい萌子が客を「ヨっちゃん」呼ばわりするわけがないというのだ。

浅見は「サルート」にも立ち寄った。ママにも聞くも誰も心当たりがないという。

「ご主人のお友達か何かじゃありませんの?」というママの助言もあり、翌日は早稲田の古本屋・富岡を訊ねた。当山の店「藤ノ川」の常連でもあった富岡の名前は圭二(けいじ)というので、浅見はヤマをかけて「藤ノ川では、ケイちゃん、と呼ばれていたのでは?」と聞いてみると、たしかにケイちゃんと呼ばれていたという。

富岡に常連客に「ヨっちゃん」という人がいなかったかを聞いてみると、翻訳の仕事をしている伊藤善幸(よしゆき)という男が「ヨっちゃん」と呼ばれ、おとなしい真面目で目立たない人、マスターのタロちゃんとも気が合って2人で飲みに行く仲、独り者で38〜39歳ってところだという。

富岡に道を教わり、伊藤が住んでいたアパートを訪ねてみた。

管理人の老人によると、今年3月に引っ越していったという。

田舎へ帰ると言っていたことから、管理人が長野県小諸市糠地…の住所を教えてくれた。

管理人の話では、伊藤は早稲田の学生だったころからの住人で、始めは一流会社へ勤めていたがうまくいかずノイローゼみたいなことになり、会社を辞めて翻訳のような仕事をはじめていたという。

4年ほど前から出張が増えたとかで留守が多くなり、2年ぐらいでそれは収まったという。

さらに浅見は伊藤の実家、長野県へと向い、伊藤の父に聞き込みをする。

農家の実家に伊藤は戻っておらず、概ね管理人が言っていたとおりの内容だった。4年ほど前にまとまった金になる仕事を見つけて、うまくいけば嫁ももらえる話をしていたがそれっきりだという。

 

浅見は戸塚署の橋本刑事課長に電話をし、伊藤善幸の転居先を調べるように指示する。第三の男である可能性が高い、という話を受け、橋本刑事課長は浅見が戸塚署に顔を出すまでに調べ尽くしていた。

伊藤の転居先は「ドルチェ南青山」ーー萌子と同じマンションだった。

しかも萌子が刺された時に110番した男というのが伊藤だった!

 

後日、ドルチェ南青山に住んでいる伊藤のもとに2人の刑事が訪れた。

伊藤に署まで同行してもらい、伊藤を応接室のような部屋に案内した。

その部屋のソファに伊藤を座らせ、待つように刑事は指示。

数分たってから、スーツ姿の男性が伊藤と向かい合うソファーの端に座り、軽く会釈をしてきた。

伊藤は、どこかで会ったことがあると思ってスーツの男性を見ると、相手の男も同じように不審な表情。

またひとり、男性が現れ、ソファーに座る。その男も怪訝な目で伊藤を見ていて記憶を探っているようだった。

さらに中年の女性が入ってくる。伊藤はまるで保険屋のおばさんみたいだと思ったーー

 

そう思ったとたん、伊藤は頭から血の気が引くのを感じた。

 

4人目の人物が入ってきた。小太りの老婦人。

空いている椅子に座ろうとして、伊藤に気がついた。

穴のあくほど伊藤を見つめ、口をあんぐり開けて叫んだ。

 

 

 

「あんた、稲田さんじゃないのさ……」

 

 

南品川のアパートの大家だった。

伊藤が否定しても「稲田さんじゃないの」と反論。保険会社の三人も立ち上がっていた。

 

伊藤が部屋から出ようとしたとき、根岸刑事課長らがそれを阻んだ。

 

伊藤善幸、保険金詐取ならびに、当山林太郎および多岐川萌子殺害の容疑で逮捕ーー

 

 

その後、伊藤は素直に犯行を全面自供。

 

西本警部補や根岸刑事課長に萌子を殺したのが伊藤だと見破ったのに恐れ入ったと言われた浅見。

佐和に容疑が集中した時点で、犯人はマンション移住者ーーとくに目撃者である可能性が高いことを悟るべきだったと後の考えを述べた。

佐和を容疑者にした最大の理由は「犯行前後、マンションを出入りした人物がいなかった」こと、つまり犯人は居住者だということが明らかだったーー。

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伊藤の供述から、伊藤は萌子に惚れきっていたこと、当山のプランに説得力があったこと。

当山は伊勢湾台風に遭遇、その結果、親友であり当山親子の恩人の息子である稲田少年を見殺ししたことになった上、そのとき当山は男をひとり殴り倒して結果的に殺していることーー殺人者と背信者、2つのレッテルとともに贖罪の人生を歩むことになったーーそして5年前、稲田家の不幸、長男・信隆が死に、年老いた広信と孫の佐和だけが残ったことを知り、当山ははじめて、保険金詐取のプランを考えついた。

得た金は教由の遺産として稲田家に送ろうと思っていた。当山の考えが伊藤を共感させた。

だが萌子との”結婚”し、萌子の肉体の虜になるや、伊藤の当山に対する誠心は消えていった。

 

あの女が、私も当山さんんも破滅させたのですーー

 

転落事件のトリック等は浅見の推理どおりだったが、分からないのは当山殺害の件ーー

 

全ては萌子が悪かったという。

伊藤の話では、稲田家に送る遺産は1人1000万円ずつ出し合い合計3000万円のはずが、当山の1000万円のみ、萌子は義務を果たすどころか伊藤の分まで取り上げた。しかも余分な保険契約を行っていたことを知った当山は「等分にしなければ全てをぶちまける」と萌子を脅した。

萌子は伊藤の欲情につけこみ、伊藤の取り分の金をもらう代わりに時折ホテルで関係を結んでいた。当山を殺す条件に萌子は自分の近くに住むことを認める、という条件を出した。伊藤からしたら抗しようのない誘惑で、密室殺人のトリックは伊藤のアイデアだったという。

ところが念願どおり、萌子の隣人となったにもかかわらず、伊藤への仕打ちは冷たく、隣に住むことは認めたけど今まで通りの付き合いはすると言ってないと萌子はうそぶいた。

男ができたという萌子は伊藤にこれみよがしに男の姿をちらつかせたりした。しかも伊藤の分配金を萌子はほとんどネコババした状態。伊藤の鬱屈した心の中で萌子に対する殺意が確実に成長していった。

浅見や佐和が萌子に接近したのは、ちょうど、そういう時期。萌子はいつにかく怯えた様子で伊藤に事態の切迫していく気配を伝えた。とくに佐和の訪問によって捜査がかなり核心に及んでいることを知った萌子のうろたえぶりは破綻が近づいていることをおもわせた。

「ヨっちゃん、なんとかしなさいよ。あたしはいいけどさ、当山を殺したのはヨっちゃんなんだから……」

その言葉を聞いたとき、伊藤ははっきり、萌子を殺そうと思ったという。

伊藤の指示で萌子は短刀を購入、その日伊藤は1時前に萌子の部屋に入り短刀で萌子を刺したというーー。

 

これで完全犯罪が成立した、と思いました。

 

伊藤は語った後、不可解な笑いを浮かべたというーー。

 

エピローグ

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「こんど、あれ(しーふらわー)に乗る時は、ご一緒しますよ」

浅見は婉曲なプロポーズのつもりで佐和に言った。

「いつ、ですか?……」

「いつでも……きみしだいです」

「じゃあ、いま……」

 

 

「うそ、です」

 

高知に向かう「しーふらわー」に乗る前

「テープは投げません。あれ、切れるから、きらいなのです」

と言っていた佐和は乗船後、赤いテープを2本、浅見に投げてよこした。

1本は逸れたものの、1本は浅見は手にすることができた。

 

船が岸壁を離れ、手の中のテープがくるくる回り尽きた瞬間、佐和はテープを放した。

切れるまで持っていることができない佐和の優しさがこの上なく愛おしかった。

 

「しーふらわー」の汽笛とともに物語は終焉ーー。

 

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